仙台高等裁判所 昭和27年(う)793号 判決
刀剣を発見した者が、美術品としての価値ありと考え、遅滞なく文化財保護委員会へ美術品としての登録申請をした以上は、その登録申請が未だ書面による正式のものでなくとも、その申請後相当期間は、登録手続中にあるものとみるを相当とすべく、その間その刀剣を所持することは条理上乃至社会通念に照し違法性を有しないものと解するのを相当とし、銃砲刀剣類等所持取締令第二条違反の罪を構成しないものというべきである。
本件において、原審第二回公判調書中、証人武田善吉、同山崎満二郎及び被告人の各供述記載によれば、被告人は本件日本刀を昭和二十七年二月末頃か三月初頃に被告人方土蔵を掃除した際、親戚から預つて同所に蔵つておいた荷物の中から発見したものであること、被告人はかつても古物商武田善吉の世話でその所有の日本刀を美術品として登録を得ていたので、その頃同人に対し本件の日本刀の登録手続をも依頼してその承諾を得たこと、武田はその頃福島県文化財保護委員会嘱託山崎満二郎に対し、他の日本刀と共に本件日本刀の審査登録を申出ていたが、三月の定例審査日も過ぎてしまつた関係もあつて、未だ書面による正式な申請はしてなく、所轄警察署への届出もできていなかつたこと、しかるに三月十九日、警察の家宅捜索をうけて本件日本刀を押収されたものであることが各認められる。(被告人の司法警察員に対する供述調書中に、被告人が本件日本刀のあることを昭和二十一年春頃から分つていて、登録を受けようと考えていた旨の供述記載があるけれども、被告人がその後その所有の日本刀六振につき登録をうけてこれを所持している事実に照し、右供述記載はたやすく措信し難い。)右の如き事情の下においては、本件日本刀の所持は登録手続中の所持とみるを相当とすべく、従つて、その所持に対して銃砲刀剣類等所持取締令第二条を問擬した原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用を誤つた違法があり、破棄を免れない。